心豊かな生活を目指した健康志向にますますなりつつあるこの日本において、スポーツの持つ意味は大きい.しかし日本では競技スポーツ・健康スポーツにおいても、未だに正しい知識・情報は行き届いていないのが現実である.この現状の根底には、体育教育や社会のシステム、スポーツに関する企業や研究機関の在り方など広範囲、多分野に渡る原因が横たわっている.ここではスポーツに関わる各分野で今、本当に求められているものが何か考察し、既存のスポーツ組織の状況と海外の状況も含めてアンケートや文献で調査した.その結果、求められているはずのスポーツの知識・情報の提供については、体育教育では不徹底で、他の機関においても、高齢者や障害者を含んだ人々が欲しているものを、必ずしも満足できる状態で迅速に提供されているわけではないことが解った.また、知識・情報に限らず、人材や施設の提供、相談に応じる場や、スポーツに関わる人間が交流する場が必要とされているが、今の日本のシステムを受け入れるだけや、新しい機関を作るだけではその実現は難しいことも証明した.そこで、従来の日本には無かった新ポジションとして、科学者などスポーツ医科学研究の側と、選手や指導者のスポーツ現場の側、そして企業や国の施設など環境の側が、互いに歩み寄る、Sports Incubation Systemの存在を検討した.これをNPO化することによって対応する分野のタテ割りを防ぐことができ、より必要な側が必要なものを得、持っている側が譲る状況が作り出される.これは、日本スポーツ界の問題点を的確に捉えており、より有効なものへの改善を期待できるものだと言える. |